[宿の女主人は、珍しいものを見るような目でこちらを見ていたが、快く部屋を貸してくれた。
しばらく滞在するつもりだと伝えたら、村長の家や広場の場所を聞くこともできて、それだけで気さくなひとなのだとすぐに分かった。
2階の部屋の鍵を受け取り、荷物を抱えて部屋を確認する。]
――いい村だな。
[わずかに軋む階段を上った先、部屋の窓から雪の村を見た。
手帳とペンを取り出して、風景をメモしようとして――やめた。
少し先に十字架と人影が見える。あれが教会なのだろうと思えば、見て書き留めるより向かって触れることを選んだのだ。
荷物をまとめると、手帳と路銀袋と、それから鍵を小さな腰かばんに入れて、毛織のケープとストールを羽織って宿を出る。]