― 回想 フェリクス王子の訪問時と両親の話―
[ドロシーの親書を届ける初仕事は、無事果たされたようで、間もなくフェリクス王子からの返書をアイリは受け取った。>>1:24
『一月以内に来る』その内容にアイリは嬉しかった。
フェリクス王子が訪れてくれることも然ることながら、もう一つ嬉しいこともある。 フォールデン家の墓参りだ。
フェリクス王子はここを訪れるとき、前当主である母や歴代担ってきた当主達の墓に必ず寄ってくれる。
特に忠臣でだった母にとってはそれはきっと嬉しく、王族に感謝すらされるのは何よりフォールデン家の当主として誇りでもあった。]
―――ここで一つアイリの両親の話をしよう。
フォールデン家の前当主、アイリの母は今から6年前、私が20歳になったときに流行病を患い他界している。
アイリが当主になったのはその時からだが、アイリの父もまた、戦死している。
アイリの父は南で戦乱があったとき、国境を守っていた指揮官だった男である。無残にも命を落とした父は剣の形見しか残らなかったが、ゾネスへと送られてきた父の形見の剣。今は母と共にゾネスの墓地に安置されている。彼もまた王に忠誠を誓っていた人物と聞く。
アイリはそれもあってフェリクス王子のことを敬愛しているのだろう――。]
[そして話は戻しフェリクス王子は都合をつけて来てくれた。
歓迎の騎士が館までの道に総出で迎え、その到着を喜んだ。
アイリも喜び、そこで私はフェリクス王子にお見合いの話、そしてあのとき退治した象の話も誇らしげに話しただろう*]