― 自宅 ―
まったく本当に誰なんでしょうね、こんなところに蜘蛛の巣を張ったのは…
[始めた掃除も終盤戦、帰ってきた時に着ていた外套や帽子、厚手の服はテーブルに脱ぎ捨て、汚れても構わない服…
…だいぶ縒れてしまった薄手のシャツとズボンといった出で立ちの男は、ぶつくさと文句を言いながら、箒をベッドの下へと突っ込んだ。
薪をくべたとはいえ、冷えきってしまっていた室内は、暖炉周辺を除けば、いまだに息が白くなるほどだ。
そんな空間の中だ。薄手のシャツなどという格好の男は当然指先が震え、歯の根が合わなくなってしまっている。
だが、背に腹は代えられない。
寒さを紛らわすようになのか、ただの本音なのか、何かにつけて文句を言い続けながら、男は2時間ほどの時間をかけ、なんとか人が住める状態にまで回復させた。]