― 450年前:大森林 ―
[イーシュトの末裔の棲むダークエルフの集落は、大森林の深くにあった。
それは、竜が眠っている場所とは大きく離れていたが、齢50歳程度―――人間でいうなら8歳程度の外見の妖精の少年が彼女を訪れたのは必然だった。
苔や蔦が覆う鋼色の鱗の巨体を、少年はぽかんと口を開けて見ていた。]
これじゃない。
[竜の結界に阻まれなかったのは、自身に流れる光の妖精の血の成せる業であろう。
けれども、祖の記憶を降ろされたその精神は闇の妖精そのもの。]
もっときれいだったのに。これじゃあ捕まえてもつまらないや。
[その声にははっきりと落胆が見えた。
膨大な記憶を受け入れたといっても、未だ本人は子供。
記憶で見た竜がまだ生きていると知れば、大人に内緒で好奇心に身を委ね見に来たのだった。要するに、カブトムシでも捕まえに来た子供と同じである。]
つまんないし、ころしちゃおうかなぁ
あっ、しょくばいにはー、うろこもってけばいっかな?
[子供故の恐れ知らずもあったか。記憶と共に与えられた魔鏡へと手を触れたが離し、その巨躯へと手を伸ばした。]