― 館の廊下 ―[現れたのは奇妙な乗り物に乗ったものだった。ふたつの車輪を持つそれは、このところ巷で稀に見かける玩具か。バランのチャイルドならば、捕縛せよとの決定が出ている。戦闘不能に追い込む手加減は難しいなと、ちらと思う。思考とは別に、身体は前へ動いていた。目の前で跳ねあがる車体。落ちかかるそれを受けても痛手になるとは思わなかったが、むざむざ当たってやる気もない。飛び込むように車輪の下を潜り抜けざま、支点となっている側の車輪へ刃を走らせる。]