― 回想 ―[あれはいつのことだったか。戯れに町へ出て、足の赴くまま尖塔の建物を目指した。 自分は呼ばれたのだと、今でも思っている。 緑の枝が光を求める如く。 白薔薇が月光を向いて咲くが如く。教会の守りも、魔物の興味を押しとどめることはできなかった。蔓の一本に自分の影を託して敷地内に忍び入り、窓の隙間をくぐって仄暗い陰影の翳りに滑り込んだとき、出会ったのだ。―――地に降りた月に。]