[ ノックの前に、ふと自分の服装を見下ろして、
酷い格好だなと思う。
左袖に染みた血は、すでに赤黒くなっている。
バルタザールに駆け寄って血だまりに膝をついた時の、スカートの赤も酷い。
……でも、酷いとは思っても、汚いとは思わなかった。
恥ずかしい汚れはひとつもなかった。 ]
きゃ。
[ 小さく声をあげたのは、取っ手に止まっていたコウモリが、
急にふくらみの目立たない胸に飛び込んできたからだ。
目を白黒させながら、とりあえず撫でてみると、コウモリは目を閉じて丸くなってしまった。
困惑しながらも置いていく訳にもいかず、抱いたままノックをする。 ]
……ユーリエよ。