― 陣営内 ―
『おい、兄弟』
[ 資材置き場に向かうディークに>>132陣の裏手からやってきた男が近付いてきて声をかけた。男は盗賊の一味で、首領が息子か弟のように扱っている相手は「兄弟」ということになっているらしい ]
『裏手に油を満載した荷馬車があったんで、油を零してロウソクを置いてきた。ロウソクが燃え尽きたら派手に燃え上がるって寸法だ』
[ 頭良いだろう?と自慢するように胸を張り、その後で、少し顔を顰めて言葉を繋ぐ ]
『その...荷置き場の近くでよ、お前さんが預かってたガキ共を見かけたんだが、ちゃっかり逃げ出して来てやがったんだな。逃げて来た場所で焼け死ぬってんじゃ、ちっと可哀相な気もするが...どっちにしろ、あっちに居ても命は無かったんだ、仕方ねえ。
こっちの顔を見られるのもまずいしな』
[ 仕方ねえと、言いながら、どこか罪悪感を感じてはいる様子なのは、やはり悪党も人の子というところか。それでも、我が身を危険に曝して子供を助けようという気は、この男には無いようだった ]