[向けた刃は、食い破るみたいにして青年の首筋を抉っていって。
おびただしい量の赤い液体が 部屋に]
………… あ、 ああああ ……。
[最後に何を言おうとしたのか。気に留めることはない。
だって、相手は人狼、なのだから。
なのにどうしてこうも胸が痛くて苦しいのだろうか。
青年との関わりは決して多い方ではない。
ただ、村に来て最初の冬に、ニコラスからその人となりは聞いていた。
村出身の旅人に、旅の話ではなく村の話をせがんだ結果である。
幼馴染の話をするニコラスの顔が今も印象的な記憶として残っているから、
だから、最後の願いくらいはせめて叶えてあげようと、ちゃんと、思ってはいた]