[中々、その場を去ることが出来なかった。
ヨアヒムのように嘔吐く>>68でもなく、密やかに歓喜を抱く>>124でもなく――いやそもそも、他者の細かな様子を気にし汲み取る余裕は、無くて]
……いやだ、
[無意識に零れた否の言葉に、自分の心を知るので精一杯]
[死んで欲しくない。
ああやって、獣に遊ばれるようにして、死んで欲しくないんだ。
皆、老いて死ぬまで緩やかに続くはずの生だったんだ。悲喜が波のように訪れるとしても、こんな、急に喪われるなんて思ってなかった。じいさんの後悔はじいさんの記憶でしかない筈だったんだ]
[――結婚なんて変化要らないくらい、いつもの生活を、そのままの村を好いていた、のに]