― 宴の前 ― >>129
[ 滑るがごとき動きにつられるように剣を抜いて擬した。
魔性の接近を拒みたかったのは事実だが、シェットラントとしては、剣を"抜かされた"という印象が強い。
抜き打ちが通用する相手かは別として、少しずつ肉薄してくる気味の悪さを感じている。
目の前の魔物が、捕まった吸血鬼の親なのだろうか。
それにしては、こちらに矛先が向く理由がわからなかったが、関心を持たれてしまった以上、簡単には立ち去ってくれそうにない。
けれど、紅髪の魔物の視線が姫に向いて物騒な言葉を口にすれば、シェットラントは静かに威圧を強めた。]
…この方が死ぬようなことがあれば、わたしも生きてはいない。
[ 一蓮托生というのとは違う、近衛としての覚悟だ。]