―クリーク砦:現在―
[戦争というものは、マーティンは実はあまり好きではない。
戦うことは好きだが、喧嘩のように感情の儘に拳を振るえば、それで良いという訳ではない。
例え相手を倒したとしても、それがイコール勝利ではないからだ。
その裏には情勢をうまく握るべく、駆け引きがある。]
んま、そういう小難しい戦略を練るのは、若や兄者の役割だしの。
[いつだったか、チャールズから「お前の戦いには考えが無さすぎる」と説教を喰らったとき、そんな本音を零したことがある。
チャールズはそれを聞いてどう思ったのだろう。怒ったか。呆れたか。
いずれにせよ、脳筋であるこのクマがこうして副将を務められるのは、ひとえにディークであったりチャールズのお陰であったりする。
今回も来るべき全面戦争に向けてクリーク砦は準備で大忙しだというのに、この副将はそこそこ暇を持て余していた。
先の戦いにより付いてしまった、汚れや傷を落とすべく、マーティンは自慢の斧を担いで砦を闊歩していた。]