狼…か…?
[姿を認めると同時に、帽子を抱えていた右手を、腰のサーベルへとやり、柄を握っていた。
しかし、その瞳を目にし、男はそのまま刃を抜かずに硬直する。
戦場において、肉食の獣は概して敵である。
基本的に、彼らは人の気配に近づかない。
人間とは武器を持っており、身が少ない割にリスクが大きいことを知っているからだ。
しかし、わざわざ近づいてくるのであれば、そこには何らかの理由がある。
戦場であれば、多くの場合、住処を荒らされ獲物を無くしたか、事故にしろ故意にしろ、子供が殺されたか、といったところである。
つまり、姿を見せる獣は、危険である。
しかし。
目の前の狼は、こちらをじっと金色の