― 新幹線内 ―
心配するな、今日の服も良く似合う。
[彼女の目前に位置する座席に長躯を沈め、双腕を胸前で組みながら瞼を下ろしていた男は、乗り出した身を即座に戻した妹へと、唐突に口を開いた。>>133
彼女の私服も制服も見慣れたものであるが、ゆっくりと開いた瞳には一片の嘘偽りもない。]
但し、逸れ易いことには代わりは無い。
向こうではくれぐれも俺の傍から離れるなよ、琉璃。
―――…琉璃、聞いているのか?
[引率の教師に従えだとか、集団の輪を乱すなだとか、回りくどい言葉を選ばず、竹を割ったように行き過ぎた過保護を示して声を続ける。
傍に同級生が居たとしても、男にとっては極日常的な会話であった。]