[それが一匹ならまだしも、何匹も同じ様に交差して走る様子が見えれば流石にその不可思議さに気付くというもの]
これは、さっきの光のおかげ…か。
[思い当たる節を探し、更に視線を彷徨わせ。
ようやく翡翠の髪色を見つけると、微かな笑みと共に頭を軽く下げるに留めた。
今は悠長に礼を言っている場合では無いし、何よりかのもりびとが男を護る術を施した訳はこの香に他ならぬだろうから]
手を止める訳には、いかないね…!
[この行動が無駄ではないと言外に伝えられた、そう思った男は漆黒の双角が正気を取り戻すまで香を保ち続けた]