『艦長!艦長も甲板へ…』
俺は残る。
『艦長っ!!』
[ 今度こそ副長の声は本物の悲鳴になった。その顔を顧みる事も無く、男は低く呻くような声を絞り出す ]
…これは俺の預かった艦だ、艦と運命を共にするのが艦長の役目だろう。うまくすれば、敵艦の一隻くらいは道連れに出来る。
[ 先の敵艦からの砲撃による衝撃で、壁に叩き付けられた際、肋骨をやられたらしく、脇腹が燃えるように痛む。この状態で退艦しようとすれば、足手纏いになると判っていた ]
死なば諸共…だ。
[ 副長はまだ説得を試みているようだったが、男の耳にはもう届いていなかった。代わりに、昏い決意を秘めて胸に落とした声に、別の声が返った ]