[ペンキと刷毛で覇道は成し得るか――という問いならば否であろう。
ペンキと刷毛で覇を示せるか――ぐらいであれば、可能かもしれない。
これしかないことに納得した彼女は、朗らかに挨拶するという明らかに自国民ではない行為を示した男に殺意を返した]
――ハッ!
[薙いだ右腕は、かつてはあの1動作で大きな覇を示し、多くの命を一度に奪ったこともあったろう。
今は、その代わりに手にしていた刷毛の毛先に溜まっていたペンキの赤い雫が男に向かって飛び跳ねるのみであった。
彼女の気性にはその時と今とで代わりはなく、覇道の力強さはそのままで――ただ、今は艦隊でも刃でもなく、ペンキ]