――― こんにちは、天使様。
貴方のお噂はかねがね。
[無私に振りまく天使の説教を求める子羊は少なくない。
迷い、惑い、光を導としたがるは人の性だ。]
私はこの近くに領地を持つ者、クレメンスと申します。
此度は貴方に教えを乞いに参りました。
[道中で躯に変えた人の子の肩書を拝借し、息を吐くより滑らかに偽りを語った。手にしたステッキの彫金は、人の貴族が有す家紋が刻まれている。此れも、道すがらの戦利品のひとつ。
どこか芝居がかった会釈を向けてから、長躯が草を踏む。
彼に距離を削るほど、豊かな花の香りが強くなる。
草原からではなく、彼そのものから香るようだ。>>64
小さく鼻を鳴らし、その傍らへ。]