― 北ナミュール島南西 アレイゼル領 ―
[先触れに出した兵の物見によると、巫女姫率いる親征軍は既にアレイゼル入りを果たしている。
なだらかな大地と水平を描く、青のすじ雲が穏やかに流れる中。
姫君を守る栄誉ある親衛達に囲まれて、高貴な朱馬車が現れる>>124。
整然と並ぶ兵馬は、白馬を降りる男が合図を出す事もなく。
乱れもしない動きで、その朱馬車に座す姫君へと王国の最敬礼で出迎えた。
増援の助けには寡兵、然し姫君を迎えるには十分な兵。
それらを率いて、一歩、朱馬車の前で片膝をつく男もまた穏やかな微笑を浮かべていた]