― 塔の街 ―[痛みに対しての感覚もなくした右脚で、魔界の入口に踏み込み、 そして、その身は、不可思議な次元の法則とともに、人間界から魔界へと対応を備え変えた。 そのようなことができるようになったのは、いつからか。問われれば、やはり、この怪我を負った時からだろう。 駆ける脚はなくしたが、異界へ踏み入れる脚がリエヴルのものになったのは確かであり、 そして、その人の世界の者が誰ひとりとして知ることのない秘密だった。]