― グランツェルツ橋 北部 ―
[グランツェルツ橋の南方から、全軍を持って撤退。
騎兵隊の追撃もあり多くの兵が失われたが、部隊の中央部分のクレステッドに攻撃が届くことはついぞ無く。
自身と、半数程度のゴブリンが渡りきった頃合いで、船上のゴブリン達の魔法維持を停止する。自身の身を優先するためである。
烏合の衆とはなるが、元々粗暴な亜人。逃げ出すようにはなるだろうが、数が数。厄介なことには代わりはないだろう。
敵軍の警戒の中、エルフや騎兵の追撃を逃れつつ彼もまた主を追って王城へ向かう。敵軍の警戒の強い東部平原を避け、西部の街道と草原を縫って駆ける。
主からの通達によれば、兵数がいくら削られても問題など無いが。
それでもなお、兵数を削りたくないという思い。その理由は2つ。
1つは、ただの心配性。何かのために兵を少しでも残しておきたいと思い。
もう1つは、主から預かり受けた兵を無駄に死なせたくはないという信念。
さておき。彼はグランツェルツ橋とジルヴァーナの中間地点までは、なんとか逃げおおせた。その配下の損害がどの程度かは、もはや考えたくも無いほどの規模であった]