[わたしは姉さんの声をたよりに、両手で這いました、必死になって。
わたしのあとに出来る赤い血の道があります。]
姉さん、逃げて……
[この、恐ろしい人たちから逃げてください。
どうか、死なないでください。
両親は、あなたに会いたがっているのです。
そんな長い台詞は話せません。
赤い血のあぶくが、わたしの口元から流れ落ちてゆきます。
わたしの灰色の瞳は、眼鏡無しではろくに像を結びません。
それでも、姉さんに取りすがり、抱きつきました。
他の人が姉さんに触れぬよう。
姉さんが、わたしの血で汚れることも構わずに。]