[どうやら航海は順調な様子。
予定通り到着するということは、そこまで時間はかからないということだ。]
そっかぁ、良かったです。
[流石に向こうに到着するまでにどうこう、ということはないはずだが、
導火線に火が付く可能性だって、常にある。
この船に乗った目的のひとつ――養父の言葉を思い出しながら、安心したようにうなずいて。
彼女の問いかけに、顔を上げて目を丸くする。]
懸念、ああ……
[少しばかり、言いよどんだ。
その躊躇は、自身の事情を口にすることへの咄嗟のためらいだったのだけれど、いかにも煮え切らないものに見えたかもしれない。
結局、本当のことのうちの半分だけを口にすることにした。]
俺ね、あのあたりで生まれたから。
長いこと離れてたんだけど、
だから、なんとなく気になって。
[重ねて問われたとしても、詳しい生まれを語ることは出来なかっただろうけれど、彼女の問いには、そんな風に答えたのだった。]
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