オレが聞いた噂はどっちかっていうと、
このあたりにはお化けが出るぞ、ってね。
まァ、本当にここに来るかどうかは分からないけど――
ほら、御同輩なら、
もしかしたらトモダチになれるかもしれないじゃん?
そうでなくても、こういうお祭りなんかの特別なときは、
ヒトと話が出来るのはいいもんだ。
[誰もいないし何もない場所にずっと居続けるのは、ほら、
――退屈だから、ね。
屋台の影から一歩抜け出せば、その体はふっと半透明になり、
向こうの景色が透けてゆく。
もし誰かがそれを見ていたとしても、気にはしないはずだろう。
いないものがいないのは、当然のこと。
そう、ヒトの命というのは、“斯様に”短いものなのだ。>>55]
ま、どっかで何か聞いたら、お前さんにも教えるよ。
[立ち去り際の少年に笑顔でそう告げて、ない手を振った。]*