―村の外れ・外界へと続く道―
[村の境界を示す杭の前で足を止める。
切り立つ崖に沿って外へと連なる道は雪に覆われていた。
これではとても、村の外へ逃げるなど叶わない。
耳元を、絶えず谷底から吹き上がる風が吹き抜けていく]
――……。
[二年前、逃走したリゼットを追った人買いは、
この崖の道を踏み外して奈落へと落ちた。
否、捕まえようとする人買いに抵抗し、突き落としたのは少女の手だ。
絶望の表情を浮かべ、暗き谷底へと落ちていく人買い。
そのとき少女は、彼の双眸に映る自分自身の――悪意に染まった瞳を見たのだ]