― 北の山中 ―
[ 目覚めたのは日の出の時刻。日中に目立つ飛翔の術を使うのは避けて、地上へ降り、獣道を掻き分けて進むことにする。太陽の位置と、時折ダウジングの導きを借りながら、昼前には目的の渓谷に辿り着いた。 ]
自由なる風 清き渓流 我が願いに答え
大気と水面を 等しく翔ける
疾駆の道を 我が前に延べよ
[ 切り立った崖を風に乗って降り、そのまま渓流の流れに乗って水面を駆け下りる。ちなみに、風と水双方に働きかける詠唱は、入学時にリヒャルトが使った術をアレンジし、術の効果を足元に限定することで持続時間を遥かに伸ばし、水流そのものの勢いを借りることで速度を上げると言う改良を加えた......ぶっちゃけパクリであった。 ]