[へえ、きれいな形だな、とそう思った。
刺青に意味がある文化もあるということは、ふんわりとしか分からない、それくらいの理解だ。
どこかで見たことがあるような気がしたが、よく思い出せない。
けれど、出来ること――戦いと、余程興味があって覚え込んだこと以外は笊のような記憶の片隅に、ぼんやりとでもその形の記憶が残っていたのはきっと、
そのとき合わせ聞いた風聞に重ね合わせて、思うところがあったからだろう。
『アースガルドの奴隷の証』
アースガルドの商品
『ニンゲンのふりをして生きている裏切者』
ニンゲンのふりをして生きている裏切り者
――… 内側から、自身の心臓をじわりと刺す、針のように。
生き残った裏切者。
ヒトのふりをして生きているがらくた人形
薄っすらとした既視感はありつつも、その刺青を見る視線に何か宿っていたとしたら、
今はただ、何か綺麗な形を見たときの素直な感嘆、それだけだったろう。]