[風は右手の内に圧縮され、大気は塊と変わって力に転じる。
剣で向かい来る蔓の一片を払ったと同時、
右手に囚える力を解き放ち、風圧を蔓の根元へ奔らせた。
衝撃は周囲に突風を巻き起こし、風の弾丸は一直線。
蔓を分ける太い袂を衝撃で打ち砕く風精の一撃。
当然、背後の城壁さえも、微塵に粉砕し、
派手な瓦解の音を伴い、名実共に風穴を開ける。
加減を怠った風の塊は城壁を突き抜け、
西の塔にを削るように掠めて、城を僅かに震わせた。
夜気に四散する力が、無作法な呼鈴が如く大気を掻き混ぜ。
ハ、と息を漏らして、魔回路を派手に広げた右手は微かな熱を持つ
蔓を退けると、同行者らを確認するように視線を巡らせた。]