[どうして人間たちはよく笑い、よく怒り、よく泣き、よく喜ぶのだろう。
陽の光に引き寄せられるようにして暗く閉鎖的なエルフの里を出て冒険者となり、人間たちの中へと飛び込んでみたというのに、その答えを見つける前に魔王は滅んでしまった。
新しい自分になってみたいという願いを胸にここまで来たが、結局このエルフは何も成し遂げることができなかったという事だ。
きっと、今日を最後に、自分がここにいる理由はなくなってしまったのだろう。
このエルフには帰る場所もない。
――還るべき場所は、あるけれど。]
……………。
[最後の夜となる今日くらいは、少しでも勇気を出して誰かに声でもかけてみようか。きっと新しい出会いがあるはずだ。……しかし。]
…………………すう。
[エール一杯と、枝豆と冷奴。
たったそれだけに至福を得て、壁際の席でうつらうつらとし始めるという、どこまでもマイペースなエルフだった。*]**