[ヤコブが怪我を負った時>>86、自分は旅に出ていた。本人も周りの人間も多くを語ろうとはしなかったから、男が知っているのは『いない間に酷い怪我を負ったらしい』ということだけ。
それでも、すっかり抜け殻のようになってしまった幼馴染の姿を見れば心を痛め、表情が戻るまでは足しげく見舞いに通っていたのだが――
村人たちと距離を置き、ひとり離れて暮らす様子に、男もまた、どう接して良いか分らず戸惑う事もあった]
……ただいま。
今年の野菜の出来はどうだい?
[そこに成される会話は、他愛もないもの。何も知らなかった頃のように、無邪気に根掘り葉掘り聞き出せるほど……もう子供ではない。
ジムゾンの事を聞かれたら、庭の手入れをしている事を伝え、ヤコブと別れた。
肩越しにその背中を一瞥し――
ふ、と視線を外すと、パン屋へと足を向ける]