[量の少ない食事を、少しずつ飲み下すように食べる。
誰かに見咎められないかと、つい周囲に警戒の眼差しを送りつつ。
その視線が、人を寄せ付けぬ二つの人影の所で、止まる。
異国の兵と、向かい合わせで座る、部隊長>>121]
……あの方、確か、リッター家の。
[ヴォルケンシュタイン家とリッター家は親交を結んでおり、傍流ではあるが一族に連なる騎竜師が海精軍に属していることも聞き及んでいた。
ただマリエッタ自身は、リッター家の事を思うと、いつも苦い思いに囚われる]
(エリー……)
[かつて友達だった女の子。
10年前に死んだことにされて、それっきり存在しないかのように扱われている少女の名を思い出す。
あの子が生きているという秘密は、今でも誰にも言わぬまま、胸の内に抱えていた]