― Nルーム ―
[ アデルの遺体を運ぶ手配をカレルがしてくれたなら
運ばれていく遺体に寄り添うようにNルーム…
冷凍睡眠装置のある部屋――へと、足を向けようか。
カサンドラは花を手向ける提案にどう答えてくれたのだか、
一緒に来るようならば特に止めることもせず。
破られることの無い銀色の繭が並ぶ部屋へ踏み入れば
ぼんやりと淡い光が照らす通路を歩いて、
アデルの身体が安置されたコクーンの前で足を止める。 ]
…おやすみ、いい夢を見るんだよ。
[ その場に誰が居たとしても、
小さく学者の口の端から零されただけの
微かな囁き声を聞き取ることは不可能だったろう。
血文字に悪趣味だと吐き捨てた姿はもうない。
両手を組んで軽く死者に黙祷を捧げてから、
誰かが一緒に居たならば、少し話でもと持ちかけ
いなければ踵を返して、Nルームを後にしたのだった。* ]