― ゼファー軍野営地・朝 ―
[ 昨夜の宴を途中で抜け出た男は、今朝も普段と変わらぬ鉄面皮を晒している。
抜けたタイミングが、丁度カナンが恩赦を言い渡し始めた頃だったから、二人の不仲を疑う者達には、納得の動きだった事だろう。
実情が斥候部隊への褒賞の酒を調達するためだったとは、カナン以外は知らない筈だ。 ]
斥候の情報によれば、敵軍には、この地に居住していた農民等も混ざっているとのことだ。
フェリクス殿の言う通り、元々の住人であるからには、彼らは、この地に関して誰よりも詳しい。
王国軍が、余程の間抜けでなければ、その知識は利用してくるだろうが、付け焼き刃の訓練で、王国軍本体との完璧な連携を取るのは困難だろう。
[ カナンの求めに応じて、意見を述べる声も常の通り淡々として抑揚のないものだ。 ]