[その天使は、真昼の全天を凝縮した蒼の瞳を持っていた。
邪を覗き続けた我が深紅の瞳とは相反し、欲を知らず、悦を知らず、堕落を知らぬ蒼穹の色。>>54
なるほど。と、魔界にて呟いて、男は彼に眼を付ける。
薄く口元を笑みで飾り、覗き穴を作っていた輪を崩しながら。
なにも、天使であれば何でも良いと云うほど悪食ではない。
対価を支払えば魔界の商人に用意できぬものは無いだろう。
永劫に存在する我が身には、其れなりの伝手もある。
だが、あの天使は一匹だけだ。>>57
果たして自ら狩猟に出るなど、何百年ぶりであろうか。
生け捕りを前提とした狩りとは、もしや初めてかもしれない。
その場で嬲り、食い潰す児戯も今は遠き昔。]