[修学旅行の準備に勤しんでいる兄妹の下に、やや放任主義の気がある両親が戻ってきたのは数日前のこと。
海外土産を戦利品めいて両手一杯に抱えた父母は、未成年二名による旅行準備を問い、兄は妹の旅行鞄に防犯ブザーを三つほど括り付けながら、修学旅行だ。と、短くと答えた。
二泊三日、行き先は紅葉の季節の京都奈良とスタンダード。
高校生活最後の一大イベントである。
そんな学校行事にのほほんとした両親は何時もの調子で軽い相槌を打つはずだった。
しかし、その日の両親は暫く黙りこくったまま、座りなさい。とダイニングテーブルを促し、何故か急遽家族会議が開催された。
因みに前回行われた家族会議は、己と妹の高校受験についてだったが、その時は両名自転車でも通える範囲の高校を受験するということであっさり落ち着いた。
妹の為に取り寄せられた女子高のパンフレットは、結局話題にも上らなかった。
その時の恙無い司会進行を裏切るように、両親はうんうんと唸り、勿体ぶって議題発表に時間をかけた。]