――早朝――
[悲鳴>>38――そうだ、悲鳴だ。自分の口からは漏れなかった悲鳴。声を掛けられ振り向いても、はくはくと口を開いて閉じるばかりで、アルビンの名を告げることも出来なかった]
[ホークがディーターに当たらないようにと立つ位置を変えて、二人がかりで雪を退け氷を崩す。目を見て喋る余裕は無かったし、“素手じゃあ作業も進まないよ”なんて当然の助言も、口を衝いてはくれなかった]
全然、崩せなくて
…雪がさあ、血で
みんな氷になっちゃってて……
[説明なのか譫言なのか、自分でも分からない言葉達。
見下ろす先で、一度、二度、突き込む度に削れていく薄紅の氷が、まるで、山に咲くダフネのように見えて――いやになる]