―二階個室―
[美酒に酔わされるような昂揚を魔の者となって初めて味わう。
一度口にすれば逃れられぬ甘い毒のように
吸血の際に感じる快楽が心にひたりと消えぬ跡を残した。
感想にシメオンが首を傾ぐ>>123と黒に映える白銀がさらと衣擦れの音を奏でる。]
グラスに注がれたものは苦そうな匂いがしていた。
だから、甘いとは思わなかった。
[吸血を拒む理由を察していた公弟の心遣いで用意されたグラスの血>>0:173。
死者のものゆえの苦さがいつしか基準となり先入観を抱くようになっていた。
シメオンの手に力が加わればその指に絡んだ己の髪がピンと張る。]