[自分ひとり逃げ切るつもりならできなくもなかったが、「殿下」と呼ばれる男まで登場するに当たって、これは相当、込み入った話らしいと抵抗をやめておく。
未決牢に放り込まれて知ったのは、ユーリエが王宮に帰りつく前に殺されたことと、その場に残されていた凶器の短剣がディークのものであったということだった。
その短剣は、レオヴィルの軍学校を卒業する際に成績優秀者に与えられたものだ。
見栄えも使い勝手も良かったが、双子が玩具にしたがって危なかったので、旅の途中で売り払った。
それが、どうして。
警吏らが納得しなかったように、ディーク自身にも謎は解けていない。]