[魔族と一口に言えど、その実、千差万別な形と在りようを有している。何せ、魔界は混沌を肯定する地だ。
その玉石混交のうちに在り、我が身は邪悪から生じた一個体であった。
闇を恐れる恐怖心、視認の嫌悪感。
世に滞留する負の澱みこそ、枯渇を知らぬ自らの魔力源。
欲深く勁い邪眼は遠路も深層も赤裸々に覗く術を持つ。
天使を飼育するに辺り、まず初めに地の底より遥か果てまで煌めく瑞光を探した。
我が鑑賞に堪えるほど、美しい形が良い。
我が遊戯に壊れぬほど、高潔な魂が良い。
真摯とは縁遠い性分をしているが、厳選で妥協せぬ程度には興味が持てた。指で作った輪を覗きこみ、見つけた光は危ういほどの無垢。>>53
人の子を楽園より追放したと同じ手で施しを与え、されど、人が持つ欲望を悪と断じる。
自らを清く正しく善なると、光より生まれた瞬間から思い込む――――、実に甘く熟れた天上の果実であった。]