[刃は皮一枚を切ったところで止まった。
朗々と告げられる声の主は、自身の与り知らぬところで話を勧めて行く。
結局なぜか、彼の城にて監視を受けることを条件に、死ぬはずだった命は現世に留められることになった。]
これは、ありがとう、と言うべきなんでしょうかねぇ。
[黒ずくめの男たちが去り、踏まれた衝撃で痛む首をごきごき鳴らしながら起き上がる。
野茨公の名は知っていた。だが面識はなかったように思う。
訝しげな色を隠さないまま、不躾な視線を彼に浴びせた。]
まぁ、自ら命を絶つような馬鹿な真似はしないので、お世話になります。
あとたぶん、いろいろと面倒をかけます。
私がいると、風当たりも強いでしょうし。
[貫かれた手の甲からは、未だ赤い筋が溢れている。
小屋に戻れば治療もできるが、数日放っておくだけでも治るだろうと、特に気にしていない。
しかしその選択で、彼>>69が呪を得る隙を作ってしまったことだけは、今でも歯噛みする思い出だ。]