おや、探しても、やはり見つからなかったか。 ……口先ばかりで、鼻もちならない自信過剰な男は。[唇を歪め、喘息と共に笑気が細く零れた。彼女の瞳から、透明な液体が零れ、月の雫めく。淡い光を放つようにすら見えて、ああ、と知らずに声が漏れる。] 世間知らずのお嬢さんを誑かすには丁度いい、と、 評価して欲しいな。[乾いた笑いは、お互いに終末を知っている。胸を幾ら掻き毟っても、その魂は遠すぎる。彼女をバルコニーの縁に追い詰め、三歩前で足を止めた。]