「父様がよっぽどの自棄を起こすような事がありましたら…ソマリ従兄様のお手をお借りするかもしれませんが。
それ以外ででしたら、何とかなります。
私、館や領地の方々とは仲が良いのですよ?」
[根回し済みである、とどこか楽し気に妹は片目を閉じ。]
「さ、お早く。
父様が兄様に刃物向けないうちにとっとと出て行って下さいませ。
お二人が喧嘩なさったら、それこそ館が壊れて、私路頭に迷ってしまいます。」
[そう父親の怒りの矛先がこちらへ向かないうちにと、背を押した妹の姿は今でも忘れない。
その後家の私兵が自分を探すのに動いたとか、父親の抑え込みに妹が従兄弟の手を借りたとか、そんな話を風の噂には聞いていたが。
結局、妹にも、従兄弟にも、手紙ひとつ書かずに現在に至る。]