[川の下流側を徒歩で渡ろうとしている歩兵たちには、北岸で待ち構える弩兵に反撃する手段がない。
転ばぬよう流されぬよう川を渡るのに一生懸命なのは羊も人間も大差なかった。
唯一、取り得る手段が潜水である。
水の中ではボルトの威力は格段に落ちる。
上流で羊が掻き回して濁った水の中では狙いもつけづらいはずだ。
そして、斜線が直線であるボルトを水中に向けて放つには水際に近づく必要がある。
渡り切った者が弩兵に組みついて乱戦になれば弩は使えまいという作戦であった。
しかし、橋から落ちてくる者や、炎をまとって飛び込んでくる敵兵、弩に射られた者、負傷して北岸に戻される者などが入り混じって流されぶつかり、緩慢な動きとなっている。**]