だったら、もういい。
私は母上を連れて家を出ます。
[それから後は根回しでもあったのだろうかと思う程早かった。
ストンプの名を捨てる事の対価に、母親と帝国に移り住むだけの基盤を得て、それが最後の生家からの餞だった。
父親からは金銭援助の申し出があったが、蹴った。
…後で少しだけ、受けておけばよかったと思わなくなかったが。
それでも一度向けた背を戻す事はしたくなかった。
当時、相当頭に血が上っていた自覚はある。
後になって一連の流れは、本妻の都合の良い流れに思えたが、今となっては確かめる術もないし、あまり思い出したくもない話だった。]