―集会場→夜道―
[集会場の中、窓辺で夜風に吹かれていた白い犬が、
何かが聴こえたのだろう>>83、白い毛に覆われた耳を
ピクリと動かし、暫く躊躇ってから、
傍らの赤毛の男の傍を離れた。
白い犬には、叫びのような歌声の歌詞は分からなかったが、
ただその響きに滲む慟哭めいた悲痛な人間の感情に、
心動かされて星空の下の夜道を駆けて。
―――やがて、横たわる少女の傍らにそっと近づき。
柔らかな白い犬が、愛情深い茶色の瞳を揺らす。
拒まれなければ、頬をつたう雫をぬぐおうとするかのように、
そっと鼻先で触れたのだったか*]