ジャン?
あれ、私、どうしてジャンと一緒に、
……男の人を蔦から助けようとして、それで……?
[どろりと淀んだその味で意識が覚醒する。
少女はこめかみを押えた。記憶が混乱しているようだ。
普段の彼女なら決して相対することのない「こわいひと」と一戦交えたような、おぼろげな記憶はあるものの。相手を煽りに煽ったことや後頭部にトドメを刺したことなどはすっぽりと頭のなかから抜け落ちていた。
そしてそれらの状況と、
今ジャンに抱き上げられ移動している状況が繋がらない。
混乱から抜け出せぬ思考。
自分を抱える男に状況を訊ねようとその顔を直視した。]
……ジャン?
なにか、あったの?
[少女の表情が強張る。
男の瞳の昏い空色は少女に強烈な違和感を植えつけた。
彼女の記憶にある色とも、つい先刻顔を合わせた時の色とも、
全く異質のものであったから。]