― 池 ―
[どこかで猫の声が聞こえた、気がする。
猫は飼ったことがないな、などととりとめなく思考していた。
猫の一匹も飼っていたら、家に残しがちな妻の気も紛れるだろうか。
そんなことを考えていたら、指先にあたりが伝わってきたので竿を上げる。
氷に空けた丸い穴から上がったのは、銀色の身体も美しい小魚だ。
こんな魚、それこそ猫にやるくらいしかないのではないか。
そう思っていたが、どうやら衣をつけて丸ごと揚げるらしい。
威勢のいい男が呼ぶままに誘われて始めた釣りだったが、これもなかなか面白いものだった。*]