[代わりに、自称”樵”の父と一緒に森へ出かけるようになり、森の民や遊牧民の子らと切磋琢磨する日々を得たのはカークにとっていい思い出だ。
乗馬を教わったことは後に伝書屋で速達をする際に役立ったし、薬草の見分け方も学んだから、医者の家に養子に入ったエディへ手紙を届けるついでの手土産はたいてい季節の生薬の原材料だった。
彼が気を使ってくれているのは承知していたから、託された荷物を装って玄関先で黙って渡すだけだったが、説明不要で済む。>>90
程なく、オクタヴィアスは高等教育を受けるためにラモーラルから出ていったと聞かされた。
それまで見向きもしなかった遠い街に、興味が芽生えたのはその時からである。]