― しばらく後・クラタエグス砦 ―
[ 敵方の兵として捕虜になった将軍の放蕩息子…政略争いの駒として、彼に大きな価値がある、と、あの指揮官が考えたのは判る。そしてそれが間違いであることも ]
どのくらい、時間…稼げるか…
[ 治療は為されても、内蔵を傷つけた身は容易には回復しない。熱を持ち始めた身体に、断続的な痛みが波のように襲ってくる ]
くっそ…いってえ…ローのやろ…ほんと馬鹿力……
[ 苦痛に身を縮めて耐えながら、情報を得る方法を考える。急がなければならない。あの指揮官が、父に連絡をつけてしまったら、彼の利用価値は暴落する。
父は決して、彼を息子とは認めないだろう。敵軍の将として、即座に処刑せよと断じる可能性すらある ]