― 中庭→どこかの部屋 ―
[絵の参考になるだろう、と連れ出された中庭を
青いチェックのワンピースと麦わら帽子姿のエレオノーレは
ファミルと二人で歩いている。
花が咲き、鳥が歌い、足元の芝生は緑を濃くしていた。
頬を撫でる風は心地よく
郷里の春を――不安なことなど何一つなかった頃のことを――思い出していた。
今の不安は――…。
考えて、それをかき消すように小さく首を振った。
暫く歩きながら、インスピレーションが浮かぶと
何かあったら呼んでください
と告げてファミルと別れた後、画材具を置いた部屋へと向かう。
どこかで誰かと遭遇すれば言葉を交わしたかもしれない。]